2014年3月21日金曜日

「ロシアの拒否権発動」

ロシアのプーチン大統領がクリミア編入を宣言した。これに先立って、国連は安全保障理事会でクリミアの住民投票自体を無効とする決議案を採択しようとしたが、常任理事国であるロシアが拒否権を行使した。

1番目のポイントは「国連の無力化」が起こっていること。尖閣諸島問題でも、中国が拒否権を発動すると、決議がなされない。

2番目のポイントは「中国への波及効果」。もしも武力の威嚇による「クリミア編入」が既成事実化すると、それに対して国際社会が事実上、何もできないことも既成事実となり、同じく「力による現状変更」をもくろむ中国が乱暴な行為に走る可能性はある。

日本にとってクリミア危機が「対岸の火事」でないのは、北方領土返還交渉に影響があるからだけではない。もっと根本的には、ルール無視の行動が中国に伝染する懸念がある。又、李承晩ラインにより、漁民が殺された事も、問題視されなくなる。

北方領土問題はロシアが実効支配している。これに対して中国の脅威は日本の領土である尖閣諸島を奪われるかどうかという問題。後者のほうが、深刻な問題。何故かと言うと、他国の領土を奪う事が暗黙の了解として黙認されてしまう。

中国が尖閣諸島の武力奪取に動いたとしても、今回同様、国連は実質的に機能しない。中国はあらゆる非難決議に拒否権を行使できる。つまり、今回のクリミア侵攻は、中国にとって絶好の予習になった。

安保理が機能しないとなれば、日本はどうやって国を守るか。残された手段は国連憲章第51条に基づく「個別的または集団的自衛権の発動による自己防衛」しかない。国際的調整機関が機能しない場合、友達同士助け合うしか方法がない。

国連憲章第51条 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。

ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)のような集団的自衛権に基づく地域的な集団防衛体制に加盟していない。だから国連が無力になると、武力侵攻に対して自力で戦う以外になす術がない。それを見越してプーチンは、ウクライナがNATOに加盟する前に動いたのである。

日本は、日米安全保障条約に基づく日米同盟がある。中国に尖閣諸島を武力侵攻されたとき、安保理が中国の拒否権行使で機能しなくても、憲章第51条と日米安保条約に基づいて米国が集団的自衛権を発動してくれるのならば、中国に対抗できる。然し、完全な保証はない。


集団的自衛権というのは、そもそも国連が一時的にも無力化したときに備えた文脈での議論。今は、日米同盟だが、フィリピン、ベトナム、シンガポール、タイ、マレーシア、ミャンマー辺りとも話し合って良いのではないか。