2013年12月28日土曜日

「海外へ留学する日本人学生を増やす、来日する外国人留学生を増やす」事が急務

海外へ留学する学生数

日本から海外へ留学する学生の数が減少傾向にある。一方、中国、インド、韓国では海外留学生が増加傾向にある。海外に留学する日本人の数は2004年の8.3万人をピークに減少傾向で、2010年には5.8万人と言うのが実情。

受け入れている外国人留学生も13.8万人と近隣経済諸国を見ても少ない。

日本人の英語力

日本人の英語力も、世界的にみて低い水準。アジアにおけるTOEFLスコアの国別ランキングでは、28位(69点)。
1位のシンガポール(99点)
2位インド(92点)
7位韓国(82点)
と比べても低い。

大学の国際化対応も遅れているため、大学の国際的な評価も低い。
世界の大学ランキングでは、
東京大学が23位
京都大学が52位
東工大が125位
と低位に留まっている。

今後の日本の成長のためには、世界で活躍できる若者をさらに増やしていくことが必要不可欠で、国家戦略として語学教育を行う必要性がある。

日本人の海外留学生

海外留学を倍増させるために政府、企業、高校、大学の協力が必要。

アジア各国で海外留学生数が増加傾向の中、日本の海外留学者数が減って来ていることは、日本の未来を考えると憂うるべき現実。政府は現在5.8万人の海外留学者数を12万人に倍増させる目標を立てている。

政府が直ぐにでもやれる事は、奨学金の予算措置。文部科学省では、150億円程度の予算措置を行い、民間企業などと協力して基金を設けて、大学生や高校生の海外留学に対する奨学金支援を拡大する。この基金の創設によって給付型奨学金の支給対象者を今の3倍強の約3万6000人に増やす計画。それでも、12万人には程遠い。

企業が、できることは多い。例えば、募集要項に、「留学経験者を優先的に採用する」と一言入れるだけでも留学者の促進に繋がる。また、採用活動を大学4年生の4月以降にずらすことで、3年生の時に海外留学に出られない弊害を除くことが出来る。

高校・大学も学生の海外留学を積極的に促進する必要がある。多くの高校では、海外留学した時に履修は単位として認定されない。従い、留学後に1年留年して、一つ下の学年にて再度学習することになる。こういうハードルがあると、高校の留学は進まない。だから、海外の高校の単位を認定する仕組みが必要。高校時代の留学が一番、精神的にも、文化的にも、英語的にも強い影響を与える。一年落ちるばかりか、高校生にとっては大学受験に不利になるために海外留学を躊躇するケースも多い。大学側が、大学受験で留学経験者を優先的に受け入れる体制を作ることも有効。これにはTOEFLや外国人教員による面接等を入試に取り入れる事で大分改善される。

大学も未だに留年しなければ留学できない大学が多く、慶應や早稲田でも、学部によっては海外留学における取得単位が卒業単位に算入できない。海外の学校との連携を強めて、海外留学における単位取得を卒業単位として認めることが早急に求められる。

企業・大学・高校が留学生を増やす努力をすることが肝要。

海外留学には、将来の為に人間関係を作ると言う働きもある。例えば、プリンストン大学に留学して、現地の大学生と交流する。同大学・大学院卒業生の多くが、FRB等政府機関で研究を行っている事を考慮すると、日本人が留学を通して、将来政府機関で働く可能性がある人達とパイプを構築できるチャンスである。

訪日外国人留学生を増やす努力も必要。

外国人留学生を積極的に受け入れることは、日本で活躍する優秀な外国人を増やし、日本経済を活性化させる。また、帰国した外国人留学生も母国における親日派知識層を形成し、海外における日本のプレゼンス向上にもつながる。外国人留学生の受け入れ拡大は、日本の国益を大きく高めるために有用であり、国家戦略として大いに進めるべき。現在これを積極的に行っているのが中国。

現在は、東日本大震災の影響もあって日本の外国人留学生の受入数は減少し、13.8万人。一方で近隣諸国では外国人留学生獲得競争が起きており、中国は現在32.8万人と海外留学生の受入数は日本の倍以上、それを2020年までに50万人とする目標を立てている。韓国も現在は6万人だが、2020年までに20万人を目標とする等、国を上げての誘致活動を行っている。

文部科学省が「外国人留学生30万人計画」で外国人留学生を2020年までに30万人にするという目標を掲げている。

目標実現のためには、英語の教員、英語による授業を増やし、英語だけで卒業できるカリキュラムを拡充するといった日本の大学の徹底した国際化、春・秋入学の導入による学事歴の解消が必要。更に、卒業も単位が取れ次第卒業できる様にする。海外では、4月が新年度とは限らないし、日本人学生にとっては、早く単位を取得して、4年生になったら短期留学する等柔軟な学生生活を設計できる。

今一番必要なのは、魅力あるカリキュラムで、即効性があるのが、海外の教授陣や研究チームを招聘すること。

大学の国際化

「世界大学ランキング」で、
東京大学が23位
京都大学が52位
など日本の大学のランクが低いことは大分衆知された。このランキングでは、「教育」「国際」「産学連携」「研究」「論文引用」の5つの項目で評価されるが、日本の大学が低評価であるのは「国際」の指標。例えば、今年のランキングにおけるinternational outlookの指標(100が最高値)では、
東京大学が29.6
京都大学が27.5
と極めて低い値。

慶應SFCでは、原則英語による授業のみで卒業できるカリキュラムがある。そういったカリキュラムを各大学でも増やすことが必要。そのためにも、日本の大学において、優秀な外国人教員を積極的に採用するとともに、日本人教員の英語力を向上させ、英語による授業を圧倒的に増やすことが必要。

海外大学との連携も強化していく必要もある。海外大学との共同プログラムによるジョイントディグリーに加えて、アメリカなどのトップクラスの大学のカリキュラムや教員等の教育ユニットを日本の大学へ誘致するような方策も検討するべきだ。

海外留学の阻害要因としては、経済的負担や語学力の低さに加えて、学事歴のミスマッチが挙げられている。世界的には秋入学がスタンダードである中で、日本の大学が春入学のみであることが問題。これは日本から海外への留学の阻害要因であり、留学生の受入にもマイナス。

意欲のある学生が、学事歴の違いで就職等に支障を来すために留学を諦めるのは日本にとって大変に残念な事。日本の大学は海外との学事歴のミスマッチ解消のため、春入学に加えて秋入学を本格導入し、学生の選択によって春・秋どちらでも入学・卒業可能とすべき。更に、可能なら、就職活動も学事暦に左右されない仕組みを作れば、外国人留学生が日本で就職する選択をし易くなる。

大学受験の英語試験をTOEFLに

TOEFLは、読解・リスニング・スピーキング・筆記で構成されたバランスの良いテスト。高校生からTOEFLの問題を取り入れた英語学習をする事で、日本人学生が留学と言う選択をしやすくなる。IELTSを好む人も多いが、2つの試験が入り乱れるよりは、統一した方が運用しやすい。

現在の大学入試における英語試験は文法や訳読に偏っており、実践的な英語力を測定する試験にはなっていない。また、いくら高校までの英語教育を実践的な英語教育に変えても、生徒の最大の関心となる大学入試で従来の文法・訳読型の受験英語が残ったままでは英語学習は変わらない。

大学入試の英語試験にTOEFLを活用し、英語の選考をTOEFLのスコアに変更すれば、実用的な英語の習得を生徒が目指すようになる。生徒は年に何度も試験を受験することができ、一発勝負と言われる大学受験の弊害も是正することができるはずだ。

大学にとっては試験開発、試験運営のコストも削減できる。

国内の受験者数は年間約 60 万人であり、大学入試へのTOEFLの活用には試験会場や採点体制などの運営上の課題もあるが、英検方式の様な仕組みは実証済みで、TOEFLの運用にも当てはまるのではないか。


アベノミクスの第3の矢、ここに教育政策を大きく取り入れると、直ぐには結果がでなくとも、将来の人材を増やす事に直結する。