2012年8月29日水曜日

韓国の経済政策は侮れない

韓国経済は、日本の4分の1から5分の1といったサイズ。

2011年のGDPは1兆1,162億ドルと日本の5兆8,695億ドルの2割以下。

政府の2012年の当初予算も325.5兆㌆(約22兆7,800億円)と日本の92兆4,116億円(2011年)よりはるかに小規模。

然し、韓国では、2011年、輸出が前年比18.7%増の5,537億ドルと過去最高を記録。輸入も同22.7%増の5,216億ドルで、輸出入をあわせた貿易総額が1兆ドルを突破。

こうした貿易の堅調ぶりが原動力となり、2011年のGDPの成長率は3.6%、日本のマイナス0.1%を大きく上回った。

さらに、2012年が3.3~3.5%(日本は2.0%)、2013年が4.0%(日本は1.7%)と、今後も高い成長を維持する見通し。

李大統領の支持率低下の主因の一つが経済の不振と言われるが、日本と比べて、韓国ははるかに好調だ。2011年の失業率も3.4%と日本の4.5%(実質10%以上)を下回る。

李大統領の経済外交の実績は侮れない。

2012年3月に対米、2011年7月にEUとのFTAを発効し、いずれにおいても日本の機先を制した。実は、FTAが韓国経済を苦しめている側面もあるが、戦略的には日本より先を行っている。言い換えると、国内世論を抑えて、FTAを成就した。別に、日本がTPPに参加すべきだと訴えているのではなく、日本はFTA、TPPの論議すら真朋にできない。

韓国は、チリ、シンガポール、ASEAN、インド、ペルーとのFTAが発行済み。トルコとは仮調印、コロンビアと交渉が妥結、カナダ、メキシコ、ニュージランド、オーストラリア、中国などとのFTAが交渉中。

FTAは、自国の産業を蝕む側面もあるが、貿易立国にとっては、明らかに有利。

日韓の2国間貿易に限ると、韓国にとって、日本は貿易総額で中国に次ぐ2位の主要な貿易相手国。

逆に、日本にとっても、韓国は中国、米国に次ぐ3位の貿易相手国。相互に重要なパートナーと言える立場にある。

韓国にとって日本との貿易は、慢性的な赤字に悩まされている。2011年は東日本大震災の影響で日本からの輸出が減り赤字額が286億ドルにとどまったが、2010年には361憶ドルと過去最悪を記録。

韓国の製造業関連の主要輸出品目が、電気、自動車、鉄鋼、船舶などで、第3国の完成品市場で日本との競合が顕著なのも特色。だからトラブルになり易いと言う側面も兼ね備えている。技術の流出も、裁判沙汰になりかねない。

その半面、部品・素材と製造設備で、韓国が日本に大きく依存してきたのは事実。この部分で、韓国は、日本製品の重要な顧客。そして、ここを止めると、韓国経済は崩壊する。

直接投資の不均衡も存在する。2011年の海外から韓国への投資は、前年比で4.6%増の137億ドルと堅調に伸びており、このうち日本からが23億ドルと国別で中国に次ぐ2位の水準を占める。

韓国の海外への投資は米国、インドネシア、中国、香港、オーストラリア、カナダ、ブラジルが上位を占め、日本への投資の比重は小さい。要するに韓国は、日本への投資が将来還元されるとは思っていない。

李 明博大統領は、現代建設を韓国で有数の企業に押し上げた経歴がある。

李大統領の経済戦略は、将来への投資が多く、彼の評価は5年~10年先に顕在化する。