2013年11月2日土曜日

TOEFL® 導入に抵抗感が大きい日本

TOEFL® 導入に抵抗感が大きい日本

日経新聞によると、政府は2015年度の国家公務員試験・総合職試験から英語能力テスト「TOEFL」等を使う方針を決めた。受験社会の日本では、TOEFL対策の塾や教材が増えるだろうが、受験の様に簡単には対策ができない。それは、TOEFLでは、SpeakingとWritingのセクションがあり、特にSpeakingに関しては、「会話ができない英語教師(講師)」では、難易度が高いからだ。

大阪府教育委員会はこれより先に府立高校入試にTOEFL、IELTS、英検など外部の英語検定試験を活用する方針を決定している。これも良い傾向だと思うが、試験を1種類に絞った方が良い。大雑把に言って、TOEFLは、アメリカやカナダの大学、大学院に入学する際に要求される場合が多い。IELTSは、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドに留学する際に考慮する学校が多い。英検は、日本国内向けのテスト。多くのアメリカの大学で、英検を留学資格として認めるようになってきたが、それでも2次面接の試験管が日本人で、「帰国子女には、日本英語が聞き取れない」等の問題がある。

筆者は、TOEFLに絞った方が良いと思うが、いずれにしても、語学を一番早く上達させる方法は、海外に在住する事。小学校低学年生で、親の仕事の都合で海外に在住し、現地の小学校やInternational Schoolに通う児童の場合、ほぼネイティブレベルの英語を習得するには、2年~2年半の期間が必要。国内で学習すると、約6年間学習しても、ネイティブレベルの英語力を習得する事が難しいのに比べて、僅か2年で習得できる。勿論、年齢が低い子供たちは柔軟性がある事にも起因するが、一番の理由は、教える側がネイティブであると言う点。

やはり、日本人が英語力を上達させる為には、ネイティブから習える環境を整備する必要がある。日本の義務教育で、ネイティブから学ぶ機会を増やせないのであれば、やはり留学は効果的。ネイティブから習うという環境に加えて、文化的背景を理解できるのが一番の恩恵となるであろう。

それでは、アメリカに留学するのか、イギリスに留学するのかだが、今やCNNよりBBCの方がグローバルになっている。日本でTOEFLを重視したがるのは、米国英語の試験だからでだが、実は現在は語学業界、出版業界では、International Englishというカテゴリーがある。Oxford University Press等では、カタログに、British/American/International等の表示がある。アメリカ人とイギリス人が英語で意思の疎通ができる様に、Academic Englishを習得して、両方の国で出版された文献を学習する事で、ある程度アメリカ英語もイギリス英語も使い分けられる様になる。従って、留学先は自分の目標や考え方によって、国や学校を選べば良い。

それにしても日本人のTOEFLスコアはひどい。2012年統計をみると、日本語を母国語にする受験生のスコアは120満点中70点。ソマリ語を母国語にする受験生と並んで世界101位。1位は、シンガポール、2位はインド、3位はマレーシア、4位が韓国、5位が香港。 インドや香港は、イギリス統治の歴史があるから当然とも言えるが、韓国が4位とはすごい。さすがに、韓国の努力を認めないわけにはいかない。(TOEFLスコアの国別ランキング/我が国の英語力の現状等を参考に検討)

アジア30カ国の中では27位で、下を見ればカンボジアとモンゴルだけ。TOEFL受験生に限れば、北朝鮮の方が日本より英語力が上。惨憺たる状況を生み出した背景には、英語を話すことができない教師が英語を教えている日本の英語教育の悲劇的な欠陥が背景にある。だからこそ、TOEFL導入を批判するのではなく、英語教育向上のきっかけにする事が必要だ。

英国の大学でつくるユニバーシティーズUKが記者会見し、海外メディアに留学を呼びかけた。英国で学ぶ日本の留学生は欧州連合域外からの留学生国別ランキングで10位にも入っていない。2011~12年の留学生は中国がトップで7万8715人。2位はインドで2万9900人。日本は3245人だけ。アメリカへの留学もかなり減少していると言う。

イギリスへの留学生は、EU域外全体では22万3855人から30万2680人に35%も増えたのに対し、日本人留学生は6200人から3245人に48%も減っている。

これは、日本がデフレであった事も原因だろうが、規制改革や経済成長には、グローバルな人材が必要なので、教育を充実させないと、日本の将来は開けない。日本が長い間「世界第2の経済大国」という言葉に酔いしれ、大学教育のグローバル化に対応してこなかったことが鮮明に浮かび上がってくる。

国内の大学に進学するのにも学生が数百万円もの奨学金を受けなければならなくなっているのが現状で、留学にはもっと費用が掛かる。日本の経済力では一般家庭から海外に留学生を送り出すのは難しくなっている。だが、海外経験のない人材では、今後日本がTPP等国際競争に晒されたときに到底勝てない。留学は、国策的な理解がないと現状ではかなりハードルが高い。

経済協力開発機構(OECD)のデータから参考に作成された資料では、日本の大学教育に対する公的支出は先進国の中では一番低い。フィンランドやフランスがかなり手厚い。大学を卒業した時点で「借金漬け」というのは日本の大学行政がどこか間違っているのではないだろうか。

やはり、日本の大学は、海外の知識人が、「働きたい」と思える環境を作る必要がある。