2014年3月15日土曜日

クリミアから見る、世界の地域化。経済再編は、安全保障の未来を占う重要な示唆


以下ツイッターに投稿した内容

今後、グローバルなリーダーシップが存在しない「地域分裂世界」になるのではないか。米国は、力はあるが、世界のリーダーの地位は弱まりつつある。では、中国はどうかと言うと、共産主義社会が、政界のリーダーとなる可能性は少ないように思う。

今後、米国も中国も圧倒的な力で世界をリードするプレーヤーたりえず、せいぜい地域のリーダーとして自分の勢力圏内で、ある程度の求心力を発揮するにとどまる。ウクライナ危機で、ロシアはクリミアを実効支配しようとした。それに対して国連が機能せず、欧米も有効な打開策を示せない。

世界的な関税引き下げと貿易投資ルールの改善を目指すドーハ・ラウンドは2001年から始まり、現在も続いている形になっているが、実際には各国の対立が解けず膠着状態に陥っている。世界リーダーがない世界は、貿易交渉に似てくるのではないか。

交渉参加国の中には「159ヵ国も集まったWTOで議論しても結論は出ない。いい加減に見切りをつけて、気の合った仲間同士でグループを作ろう」という気運が出てきた。それが世界に広がる自由貿易協定(FTA)や環太平洋連携協定(TPP)の議論が高まっている理由。

これから国連が当初の理想とは違って世界の平和と安定にたいした役割を果たせないのだとしたら、世界の国々はどうやって自国の安全保障を達成するか。あるいは達成しようと考えるか。それは、TPPの様な、仲間を作るしかない。するとその仲間同士は当然集団的自衛権も行使する。

通商分野で「世界貿易機関が役に立たない」ことがはっきりしたとき、各国が注目したのは「地域のグループ化」。それが、FTAでありTPPだった。同じように「国連が役に立たない」となったら、各国が「地域のグループ化」に希望を見出す。自分が属する地域で安全保障体制を整える。

日本がアジア太平洋地域のリーダーとして今想定できるのは、米国。中国は想定できない。中国は自由と民主主義、法の支配、人権の尊重、市場経済という理念と制度を、日本と共有していない。中国には自由も民主主義も法の支配も人権、市場経済もない。国家資本主義である。

世界が地域に分裂し混沌に向かう中、日本がアジア太平洋という地域で平和と安定を維持しようとするなら、米国や豪州、ニュージーランド、フィリピンやマレーシア、ベトナムといった東南アジアの国々と手を組むべき。通商交渉と同じ様な顔ぶれとなる。

国連が機能しないなら、地域のグループ化は必然。中国が尖閣諸島に武力侵攻したとき、国連は守ってくれない。なぜなら中国は安全保障理事会の常任理事国だから。

ロシアの武力侵攻を国連が止められないのはロシアが常任理事国であるから。まったく同様に、中国が常任理事国であるからには、中国の尖閣侵攻に対して国連は無力。

頼りになるのは、日米安保条約によって、若しかしたら集団的自衛権を行使してくれる可能性が少しある米国だけ。ところが、米国は、中国に傾きつつある。

日本が安全保障をより強固にしようとするなら、通商交渉がラウンドからFTAを経てTPPに向かったように、日米同盟からもう少し広い地域に向かうのは自然な流れ。そのためにも、集団的自衛権の行使容認は不可欠の条件になると言うのが安倍政権の考え。

米国は1951年に日米安保条約を結んだとき、日本の集団的自衛権について事実上、何も言わなかった。日本が自衛隊の前身である警察予備隊を創設したのは前年の50年秋だったので、当然。日本の予備隊に米国を守ってもらうなどという考えは、米国にあるはずもない。日本に米国を守ってもらうと言う発想は、ジョークに等しい時代だった。

たとえば日本がフィリピンを加えた集団安全保障体制を地域で構築しようとすれば、フィリピンには日本を守ってもらうが、日本はフィリピンを守らないという話が通用しない。

ウクライナがなぜ欧州連合(EU)とNATO加盟を目指したか。万が一のときは、NATOに集団的自衛権を発動してウクライナを守ってもらいたいから。今回の事態は日本にそんな安全保障の核心的課題を突きつけてる。戦争は、反対。でも議論は当然必要。

1939年、第二次世界大戦の初期、当時のソビエト連邦は、ドイツ軍に続いて軍隊をポーランド領内に侵攻させた。その際の大義名分は、ポーランドにおけるウクライナ系とベラルーシ系の住民の保護だったのだ。 今と似てないか。

クリミアでのロシアの動きに対して、欧米先進国は激しく反発。まず6月にロシアのソチで開催が予定されているG8サミットの準備中止を決定。さらにアメリカからは、「ロシアをG8から追放する」など、制裁すべしという意見も出ている。冷戦終結後以来の危機だといえる。

2月下旬、ウクライナの首都キエフや西部で大規模な反政権デモが起きた。そして親ロシア派のヤヌコビッチ大統領は国外脱出。一方、政治犯として収監されていたティモシェンコ元首相が復活し、親EUの新政権が動き出したかに見えたが、ロシアが黙っていなかった。

クリミア自治共和国は、人口約200万人のうち6割がロシア系。そして地図では、クリミア半島は、黒海に突き出すような形になっている。そして、ケルチ海峡を挟んで目と鼻の先にロシアがある。つまり、ロシア側から見ると、クリミア半島はヨーロッパ側への玄関。

ここで問題になるのは、日本の「立ち位置。現在、アメリカとの関係は微妙。中国、韓国ともうまくいっていない。そんな日本にとって、外交的に順調な関係を築いていた大国がロシア。安倍首相は2月にはソチを訪れ、プーチン大統領と会談もしている。

日本とロシアの間には、2つの非常に大きな問題がある。ひとつは、いうまでもなく北方領土問題。もうひとつは、天然ガスのパイプライン。このパイプライン建設については、プーチン大統領も了解していると言う噂がある。

1. 米国も中国も世界のリーダーにはなれない
2. 世界は細分化する。
3. 決定的な世界のリーダーは現れない。
4. 地域がTPPの様に集合体として安全保障で協力する。
5. 戦争は反対だが、集団的自衛権の問題は避けて通れない。
6. 今日本は、米国に同調するのは危ない。
7. ロシアとの外交関係を潰してはいけない。