2014年3月19日水曜日

小保方晴子さんの剽窃論文発覚の経緯と背景にある可能性

小保方晴子ユニットリーダーを主著者とする「STAP細胞」の論文が、なぜ、こんなに早く、発覚したのか。論文がNatureに掲載されたのは129日。同日、早速、批評記事が、科学者の情報交換サイトというPubpeerに掲載さた。

Pubpeerは、世界で公開された科学論文について科学者同士で意見交換するためのソーシャルメディア。12年に立ち上げられ、匿名で利用できるのが特徴の1つだ。過去、クローンES細胞に関する論文で間違いを発見した実績がある。

筆者は米カリフォルニア大学デービス校医学部のPaul S. Knoepfler博士。以下6点を指摘した。http://bit.ly/1fFas4n

Paul S. Knoepfler博士による、STAP細胞に関する疑問。 1. Will it be reproducible by other labs? 2. Will it work in human cells… twishort.com/SOWec

「他の研究室でも再現可能か」、「人間の細胞でも大丈夫か」、「大人の細胞でも大丈夫か」などについて、疑問を提起している。

Paul S. Knoepfler博士のコメント欄で、  Here is a false-colour image of Fig. 1i:  http://imgur.com/1nBfKTr  との投稿があり、ここから写真の加工が発覚した。

このコメントが、11jigen氏の英文ブログに飛び火。他のブログにも広がった。

写真の使い回しに加えて、小保方さんに大きなダメージとなったのが、博士論文の剽窃。米NIH(米国立衛生研究所)のサイトにあるものと同じだという指摘がtwitterで回り始めた。

ライフサイエンス統合データベースセンター特任助教・内藤雄樹さんが、10年前に開発したdifff(デュフフ)というツールがある。http://difff.jp/ このサイトで論文を比較して、11Jigenさんが剽窃だと指摘した。

NIHの文章はネットからとれるが、小保方さんの博士論文はどう入手したのか。ここが良く分らない。http://bit.ly/1egKZBX 小保方氏の論文を見ると、pdfに貼り付けられている。コピーをpdfに変換したのかもしれない。

と言う事は、博士論文は国会図書館に寄贈されることになっているので、11年に博士号を授与された小保方さんの論文を誰かがコピーしたのだろう。国会図書館の検索システムhttp://bit.ly/1dlpfRV で検索したのだろう。

では、何故論文に使いまわし画像や剽窃を用いたのか。私は、文系なので、さっぱり分らないが、経済の観点で考えてみよう。

小保方氏は科学者として、トントン拍子に出世を遂げた。早大卒業後、再生医療の研究を開始。08年には米ハーバード大に留学し、11年、27歳の若さで博士の学位を手に入れた。「米国の科学者の間で蔓延する結果至上主義」に影響を受けたと言う見方がある。

いずれにしても、学生時代の研究態度は、社会に出ても大きく影響する。最初に上司から習った、仕事のやり方を、例え上司が嫌いでも、自分が同じ立場になると真似しているのと似ているかもしれない。

特許申請の焦りもあったかもしれない。小保方さんは学術論文の発表以前に、ビジネスの世界で役立てるため国際特許の申請を急いだ。小保方さんと言うよりも、組織が急いだのだろう。

STAP細胞は、英科学誌「ネイチャー」に発表される9か月前の20134月、米当局に特許が出願されていた。出願者は理研、東京女子医大、及びハーバード大の関連病院の3施設で、発明者には小保方さんら7人が名を連ねている。

京大の山中教授のiPS細胞も、学術論文の発表より先に特許を申請している。再生医療に応用できる細胞生物学の分野は、いま最もカネになる科学分野といわれている。後々、実用化された時の権利関係を睨み、学術論文の発表より先に国際特許を申請するのは、常態化している。

特許戦略のなかで、まだ若い小保方さんは上司や先輩に強くいえず、研究がそこまで進んでいないのに特許申請に踏み切ってしまった。恐らく、山中教授の場合、特許申請時に、既に論文の構想ができていた。小保方さんは、特許申請の事務屋さんの仕事をしたのではないか。

特許申請は、学術論文に比べて圧倒的に情報量が少ない。しかし、特許申請によって世界中の人が研究の中身を知ってしまうと、誰かがそれを参考にして先に学術論文を発表してしまうこともありえる。だから、小保方さんは論文の完成を焦った。

逆に、特許申請すれば、再生医療の研究者や医薬品業界から否応なく注目され、若いのにすごい発見をしたとチヤホヤされる。そこで小保方さんが有頂天になったと言う見方もできる。しかし、真相は分らない。

学術論文の発表媒体も、激しい競争がある。小保方さんが論文を発表した英科学誌「ネイチャー」には、米科学誌「サイエンス」、細胞生物学に強い「セル」が有名。

京大の山中教授はiPS細胞の論文を「セル」で発表した。そんな状況下で、「ネイチャー」が小保方さんに早くウチで発表してほしいと要求していたことも考えられる。

最後に、小保方さんの疑惑が次々に明らかになったのは、ネットで研究者が指摘したから。どうして剽窃の「パターンがよくわかる」のだろう。それは、日常的に盗作を見ているからではないか。


原発もそうだが、複雑に利権が絡み、なかなか脱原発は進まない。同様に生物学の世界も複雑な仕組みが研究者にプレッシャーを与える様だ。